【2019 5月】杢谷 圭章 講師(版画LABO/銅版画コース)

みなさま初めまして。版画LABOの銅版画クラスを担当しております杢谷圭章です。

銅版画の作品を美術館やギャラリーで一度は目にされたことがある方はとても多いと思います。実際にどのように制作さられているのかを知らない方もまた多いのではないかと思います。そこで簡単に銅版画の技法について触れていきたいと思います。

銅版画の技法は二つの種類に分かれ直接法と間接法になります。このようにご説明すると難しい技法のように思えますが、銅版画とは凹みを版面に施してインクを詰めて刷り取ることです。その凹みをどのような手段をとるのかで多様な表現を得ることが出来きます。

直接法の一つ、ドライポイントは先端の尖ったニードルで直接傷をつけていきます。版面に出来た溝のまくれにインクが不規則に残り独特な黒のニュアンスを生み出してくれます。

間接法のエッチングは銅版画の最も代表的な技法になります。銅板を酸(腐蝕液)につけて溶かしながら溝を作るため、鮮明な線を生み出してくれます。また酸につけている時間を変化させ、線の強弱、美しい濃淡を得ることができます。

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私はこの二つの技法を組み合わせて作品を制作しています。

ダイレクトに銅板を力強く線を刻む技法と酸(腐蝕液)につけて銅板を溶かしていく技法を画面の中に別々に配置しています。この異なる技法で作った表情が絶妙なバランスをとり作品として成立しているのだと思っています。

また画面に二つのイメージを構成していますが、もともとは一つの風景をモチーフにしています。風景と言っても特定の場所に行ってその風景を忠実に再現するのではなく、その場所に立った記憶を辿りながら描いています。

趣味が釣りということもあり一日中、川辺や湖畔に過ごす機会があります。自然に囲まれながら時間とともに変わりゆく美しい光を見つめていると、この光の変化を画面に繋ぎ止めたいと欲求に駆られます。この体験が私にとって描くことの原動力になっているのだと思います。

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版画を通して制作する喜びと感動、版の魅力をひとりでも多くの方と一緒に体験をしていきたいと思っております。版画LABOでご一緒できることをお心待ちしております。

 

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杢谷圭章
1980年 静岡県生まれ
武蔵野美術大学大学院造形研究科
美術専攻版画コース修了
趣味:釣り

2006年 【個展】養清堂画廊(‘10‘12‘14‘16‘18)
2019年 「版画のコア2」/文房堂ギャラリー
「形象の庭」/うしお画廊